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祝☆カズオ・イシグロ氏 ノーベル文学賞 受賞!!! カズオ・イシグロの作品世界をもっと知りたい人へ~2015年6月のカズオ・イシグロ講演会の記録~

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こんにちは、かりんです。

かりん猫
ブラボー!カズオ・イシグロさま♡

 

この記事は、カズオ・イシグロ氏、ノーベル文学賞の受賞を記念して、2015年6月に聴いた彼の後援会の内容を加筆修正し、gooblog『いつもココロに栄養を』から当サイトへ移動しました。

 

カズオ・イシグロ氏と言えば、記憶に新しいのが綾瀬はるか主演のドラマ化『わたしを離さないで』の作品。当サイトでも、『わたしを離さないで』をこんな風に紹介しました。

カズオ・イシグロ氏 原作「わたしを離さないで」はココに注目☆

こんにちは、かりんです。   この記事は、ちょっと前にドラマ化したカズオ・イシグロ氏原作『 ...

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かりん猫
この記事は2015年6月に、イシグロ氏の新作『忘れられた巨人』出版記念・講演会で聴講してきた記録です。

  • カズオ・イシグロ氏に興味を持ち、どんな作品世界を描く人なのか?
  • ノーベル文学賞作家の作品への思いや、物語を表現する手法は?
  • これから小説家を目指す人へのキッツイ―助言も記しました。

早川書房主催の第19回ハヤカワ国際フォーラム カズオ・イシグロ講演会の聴講券を手に、普段は聞けないような作家ご自身の講演会を二時間みっちり聴いてきました。

とその前に、カズオ・イシグロ氏の略歴から紹介していきましょう。

 

カズオ・イシグロ氏の経歴は?

1954年長崎生まれ、5歳の時に英国に渡り日英両国の文化背景を持つイギリス人作家。

1989年『日の名残り』でイギリス文学最高峰のブッカー賞を受賞、その後『わたしを離さないで』『夜想曲集』を発表。この3作品は、日本でも映画上映や劇化されている。

 


2015年に10年ぶりの長編『忘れられた巨人』を発表し、NYでは発売前からベストセラーにランクインした。

 

 

早川書房主催のハヤカワ国際フォーラムとは?

 

ハヤカワ国際フォーラムでは、定期的に海外からの著名作家を招聘し、読者とのふれあいの場を設けているそうです。

過去には、
○アルジャーノンに花束を のダニエル・キイス
○ジェラシック・パーク のマイクル・クライトン
○サンデル教授
○プラトーン のオリバー・ストーン監督
ちなみにカズオ・イシグロは2001年『いま小説が目指すこと』というテーマで講演され、今回二度目になります。

 

早川書房の読者が、聴講券に応募して見事当選したら、上記のような海外の著名作家の講演会が無料で聴ける、貴重な機会なんですね。

ちなみに、ワタシは過去にオリバーストーン監督の講演会へも行ったんですよ♬映画プラトーンが歴代ベスト15には入るくらい好きだったので、聴きに行きました。

かりん猫
内容が濃くて、インテリではないワタシでもハヤカワ国際フォーラムで聴講し終わったあと、物凄くアタマが良くなったと錯覚したくらいですからね( ´艸`)

 

 

それでは、いよいよ本題です!講演会でのカズオ・イシグロ氏の生の声を振り返ってみましょう!

2015年 ハヤカワ国際フォーラム カズオ・イシグロ講演会の記録

この講演会は二部形式で構成され、最初に早川書房社長から英語のご挨拶がありました。かなり美しい英語の発音と流暢な話しぶりに正直、驚きました。

ちなみに視聴者には同時通訳ヘッドフォンが渡され、日本語か英語をチャンネルで選びながら視聴した。とても素敵なホールで、シートも座り心地が良かったのを記憶しています。

会場はほぼ満席、杏さんが本当にスタイル良くて、トークセッションでも事前に良くお勉強されているなあ。。。という印象を受けました。

 

 

第1部 トークセッション   カズオ・イシグロ氏×女優の杏さん×文芸評論家の市川真人氏

 

市川氏の司会で進行。杏ちゃんは白いブラウスに濃紺のフレアミニスカートという清楚ないでだち。入退場の時に、余りの長身と腰の高さに『杏ちゃん、やっぱり半端ないモデル体型だわ~』とスタイルの良さにまず、驚いた。

 

 

第1部では、作品全体についてのこと。カズオ・イシグロ氏が、作家側から役者側からの物語を表現する手法について語る。杏さんから作者への質問など。表現者としての考え方などが語られた

カズオ氏によると、今までの作品は登場人物が記憶をたどるものが多く、そういった記憶を回想する手法は小説では上手く表現できるのだが、例えば映画では回想を思ったとおりに表現できない、適さないとのこと。

そのため、自身は作家には向いているが、脚本家としては優れていないと。『日の名残り』や『私を離さないで』等、今まで映画化されたものもいくつかあるが、いざ脚本を書こうとしても、氏が記憶をたどることにこだわるあまり、脚本が上手くできないと語っていた。

 

カズオ・イシグロ氏は、記憶をたどりながら物語を構成していく作家です。

氏は一枚の写真のような静止画を思い浮かべ、そこに写っている人々がどういう感情で何をしていたか。その静止画の前後にどのような出来事があったかを思い出しながら、記憶の糸をたぐり寄せていくそうです。

 

また小説の原作が映画化、舞台化され世界中に広まり新たな演出、作品に生まれ変わることについては?

不満はなく、むしろ喜ばしく、作品の変化についても楽しみながら受け止めているそうです。自分の手から離れて、時代が流れても場所が異なっても語り継がれるフェアリーテイル(おとぎ話)のようで素晴らしいことだと。

 

杏さんからの質問『氏の作品が読者や評論家から論じられることについて、どう思われるか?』

登場人物の感情表現について論じられることは喜ばしく、そうではない場合は余り嬉しくないそうです。作品の中で感情表現を大切にしていることが、氏の話ぶりから伝わってきました。

 

カズオ・イシグロは本当に饒舌で、時にユーモラスにお話されました。また、杏さんは一つ一つ慎重で的確な話ぶりから、頭の良い方だなぁと感じました。

 

カズオ・イシグロ氏から『作家として優れた作品を残せるピークは35歳~45歳まで。』

著名な作家達も初期の作品に良作が多いとか。

そのため、若手作家に氏は『のんびりエッセイやルポタージュなんか書いてないで、小説を書きなさい。君達が思っているより、時間は残されていないんだよ!』とアドバイスしているそうです。

歳を重ねた作家は、ピークを過ぎたサッカー選手と同じように、今までとは違った技法を使って勝負していくのが良いそうです。

 

 

第2部 トークセッション カズオ・イシグロ氏 × 英米文学者 柴田元幸氏 × 翻訳者 土屋政雄氏

柴田氏の司会で、主に『忘れられた巨人』について話が進められた。

 

この作品『忘れられた巨人』が書かれたきっかけは、記憶について表現しようと思ったため。

忘れられた記憶には、以下2種類がある。

  1. 思い出した方が良い記憶
  2. 思い出さなければ良かった記憶

 

楽しい記憶は前者だが、後者は記憶を取り戻したがために、かえって関係が悪化したり、争いごとが起きることもある。

忘れていた方が良い記憶もあるということ、そのような記憶は、個人レベルにとどまらず、国家レベルでもあるのではないか?!

過去の歴史を振り返ると、どんな国にもそういった忘れられた巨人(無くしていた方が良い記憶)があるはずだ。それを表現できないかと思ったそうです。

そして、思い出すべきでない記憶を取り戻した時、人々はどういう感情を持つのかを作品から感じとってほしいと。

 

『忘れられた巨人』の文体でカズオ・イシグロ氏が気をつけたところ

他にも文体について、翻訳者と作家の立場から興味深いお話が聞けました。

 

『忘れられた巨人』の舞台は、中世ブリトン 6世紀くらい。アーサー王が崩御してまもなく。

この時代はまだ、英語という言語が確立される前のため、氏は登場人物の会話に使う文体に工夫を凝らしたそうです。

 

翻訳者土屋氏によると、他のイシグロ作品に比べて文体がシンプルになっている。英語環境で育った高校2年生レベルなら普通に読めるレベルだそうです。ただし、1つの文に2つ以上の動詞が入っているのが、意味は取れるけれど奇妙な感じだとか。

 

カズオ・イシグロ氏がどのように、中世の文体を表現したのか?その手法は?

カズオ・イシグロは、当時の言葉のように表現するために、工夫をしたそうです。

 

当初は、通常の英語に難しい単語を取り入れて、昔ことばを表現しようとしたが、しっくりとこなかった。

 

そこで今度は、関係代名詞など複雑なものを排除して、平易な文にしたため、動詞が1つの文にいくつも入って、少し奇妙な文体になってしまったそうです。

 

そしてこの手法が昔ことばを表現するのに合っていたそうです。

かりん猫
こういった文体については、翻訳されたものでは味わえなくて残念ですが、機会があったら原書で会話部分を確認してみたいものですね。

 

 

最後に司会の柴田氏から、視聴者からの質問アンケートをチョイスしてもらい、いくつかカズオ・イシグロに答えて頂きました。

Q1 カズオ・イシグロ氏が影響を受けた日本の映画は?

小津映画の特に『東京物語』に影響をうけており、作品全体に影響があるかもしれない。ただし、老夫婦の会話については、特に意識はしていない。

 

Q2 これから作家を目指す若者へのアドバイスは?

まずは『本当に小説を書きたいのか?』を良く自問してください。

華やかな作家のイメージに憧れるだけなのかもしれないし、簡単に書ける気がするだけかもしれない。

日本に限らず、アメリカやイギリスでも若者の作家志望者が増えているが、彼らは実は『書きたい物語がない』と本当に気づくまでに相当の長い年月(35歳くらいまで)を無駄に費やしている。

そのためかけがえのない貴重な時間を無駄にしないためにも、ぜひ『自分は本当に書きたいか!』を考えてほしい。

 

 

カズオ・イシグロ講演会終了後。。。感想など。

講演会終了後、多くの感想がツイッターでつぶやかれましたが、皆さん、実にいろんな内容をつぶやかれているのが興味深い。

それだけ内容の濃いトークであり、カズオ・イシグロの話したいことが多岐にわたり、視聴者の感性によって響くことばも違ってくるのであろう。氏の主張を論じるのではなく、作品同様に自分の感性を信じて『感じる』ことを大切にしていきたい。

 

氏のことば1つ1つが奥深く、『うん、うん。』と頷き続けた2時間。イシグロ作品をまた違った角度で読んでみたくなりました。尚、この講演内容は後日早川書房より発売されました。

かりん猫
カズオ・イシグロ氏の言葉の端々から出る奥様とのエピソードが微笑ましく、愛妻家でいらっしゃるのが伝わって可愛らしかったなあ♡奥様と世界中を周りながら、著作の紹介や講演活動をされているそうです。

 

余談ですが、カズオ・イシグロ氏と同世代の村上春樹氏は交流があるようで、2015年にオープンしていたメール相談室『村上さんのところ』でこんな風に村上氏は話しておりました。

「カズオ・イシグロから、『村上さんのせいで新刊発売日がお祭り騒ぎになって大変だよ。』と文句を言われている。(村上春樹氏がこの慣習を作ったため)事実、『忘れられた巨人』新刊発売日は、NYが大盛り上がりだったらしいです。何だか微笑ましい会話だな~とほっこりしました。

 

 

この記録はおよそ2年半前のものですが、カズオ氏の作品にかける気持ちや、手法などはそれほど変化していないのではないでしょうか。

かりん猫
まだ60代前半のカズオ・イシグロ氏。これからも、人の感情を揺さぶる作品を描いて欲しいな~といちファンは願うばかりです。

 

 

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