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ヒラリー・ハーン コンサート回顧録 2015~フィルハーモニア管弦楽団演奏会 指揮 エサ=ペッカ・サロネン~

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こんにちは、かりんです。

主人のヒラリー・ハーン記事、第三弾です。近年、ヒラリーハーンの来日回数が減っており、ヒラリーハーンのファンとしては2018年こそは、来日して欲しいのではないでしょうか?

ヒラリーハーン来日まで待てないアナタへ、少し昔のコンサート記録を回想してみましょう。2つのコンサートをまとめたものです。

この記事は、gooblog『いつもココロに栄養を』に主人が寄稿した記事を、当サイトへ移動しました。

ヒラリー・ハーンのコンサート回顧録~2013年11月オペラシティにて~

こんにちは、かりんです。 前回のヒラリーハーン論に続き、2013年のコンサート記録です。近ごろはヒラリーハーンの来日コンサートが減ったため、少し昔に遡りますが...  当時を振りかえってみましょう。 ...

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ヒラリー・ハーン論~2013年11月来日に寄せて~

こんにちは、かりんです。 この記事は、2013年goo blog『いつもココロに栄養を』に主人が寄稿したものです。 ヒラリー・ハーン来日に寄せて、2013年11月時点での『ヒラリーハーン論』を語ってお ...

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ヒラリーハーンのコンサート 2015年3月5日(木)川口リリア メインホール

川口リリアには立派な音楽ホールがあるのですが、フル・オーケストラということでメインホールが演奏会場となりました。ここで聴くのは初めてです。

良くも悪くも凄い会場でした。一階席にかぶさる張り出しの二階席。残響がほとんどないデッドでドライな音響。地方都市にある典型的な多目的ホールです。ここで舶来オーケストラに演奏させるのは酷ではなかったでしょうか。

 

一曲目、シベリウス「フィンランディア」

オケの乗りはよくありません。響きにうんざりしているのではないでしょうか。しかし、弦の響きは素晴らしく、続くハーンの独奏に期待が持てました。要は弦が響くかどうかなのですから。

 

二曲目、いよいよハーンが登場してブラームスのヴァイオリン協奏曲です。

シルバーのドレスに結い上げた黒々とした頭髪。さながらギリシヤのアテナ神です。このヴァイオリン協奏曲は、人間感情(喜怒哀楽)のすべてを盛り込み縒り上げ、堅固な交響的調べで包み込んだ渋めの名曲です。気軽に聴ける曲ではないかもしれませんが、聴き終わった後の充実感は替えがたいものがあります。

一楽章、ハーンの独奏が始まりました。

切れ味鋭く、一音一音手に取るように伝わってきます。この客席での響きは素晴らしい。しかもこの音がブレンドされていない原音だということです。美しい音色、汚い音色、独奏者の意図がダイレクトに伝わってきます。ヒラリーは絶好調に近かったのではないでしょうか。左手がヴァイオリンに吸い付き、ストップにぶれがありません。そのヒラリーの熱演がオーケストラのやる気を掻きたてたのでしょう、俄然全体が熱を帯び、一体感が生まれました。反面、オケと独奏者間にわずかなピッチの狂いを生じさせたのは瑕瑾でした。もちろんピッチは楽章間で修正されました。

 

二楽章、オーボエが哀愁たっぷりな主題を吹きますが、デッドなホールではちょっと可哀想でした(まるでチャルメラの音)。

ハーンの独奏は曲想が変わった中間部の謳い上げが実に素晴らしい。スケール、グリッサンドでわずかな揺らぎを与え、音楽に奥行きをもたらしていました。

 

三楽章、普通の奏者はここまででへばってしまいますが、ハーンは最後までパワフルです。

サロネンの煽りに応えた第一主題のスフォルツァンドが劇的に決まります。もはや聴衆は好調なハーンと共に音楽に没入し、導かれるままです。瞬く間に終結となりました。素晴らしい集中力、演奏力だったと思います。全体的にアグレッシヴで力強く、曲の厳しい面が前面に出た演奏でした。また随所で汚い音が出せるのは武器になるのではないでしょうか。サロネンは例によって微妙な間の取り方で即興的味付けを施し、演奏を刺激あるものにしていたと思います。

 

アンコールはバッハ無伴奏パルティータ第3番より「ジーグ」。

後半はベートーヴェン「英雄」でした。快速、流線型の演奏で、サロネン&フィルハーモニア管は圧倒的名演をこのホールに刻みつけました。アンコールはシベリウス「悲しきワルツ」。

 

 

 

ヒラリーハーンのコンサート 2015年3月8日(日)横浜みなとみらいホール

いよいよツアー最後のコンサート、会場はハーンにとってあまり相性が良いとはいえない、みなとみらいホール。疲れも出ていたと思います。若干乱れがあったようですが、貫禄で見事に演奏し終えました。

このホールは金管・木管はともかく、弦の響きがあまり宜しくありません。響きが籠もってしまうのです。残響は豊かなだけに残念な点です。一階後ろは駄目で、ステージ真後ろはまずまず、今回は三階で聴きました。音は十分届き、まずまずだったと思います。

全体の印象は、響きが程よくブレンドされ、理想的なブラームス協奏曲になっていたと思います。

ハーンの独奏は過激さ・力強さが影を潜め、柔らかく美しい響きが際立っていました。二楽章のメインのテーマの伸びやかな謳わせ方が良かったです。オケとの調和を重視した立派な演奏でした。サロネンは今回も即興の間合いを独奏者に投げつけていたようでした(楽章の緩徐部分で)。テンポも謳わせ方も急に任されるとなると誰しも緊張してしまいますよね。

アンコールはバッハ無伴奏パルティータ第3番より「ブーレ」。

後半はシベリウス交響曲第二番。前回来日時の演奏よりも格段に良かったと思います。終結の輝かしく壮麗な金管の響きは言葉に尽くせません。アンコールはやはりシベリウス「悲しきワルツ」。終演後鳴りやまぬ拍手にサロネンがステージに再登場し、万雷の喝采を浴びました。

 

最後にブラームスのヴァイオリン協奏曲の名盤というわけでもない、印象に残るレコードを二点挙げておきます。

(ハーンのCDは三楽章が速すぎる気がします)

 

シューリヒト指揮ウィーン・フィル クリスティアン・フェラス(vn)

第三楽章の第一主題の奏し方が特異で(八分音符のスタッカートを無視しテヌートにしている)、それだけで印象深い演奏。シューリヒトの諸盤の例に漏れず聴けば聴くほど味が出るのでしょうが、当方の所有しているCDはかなり音が悪く聴きとおすのがしんどいです。

 

ケンペ指揮ベルリン・フィル ユーディ・メニューイン(vn)

冒頭の数小節を聴くだけで一気に引き込まれ、一も二もなくケンペの指揮の素晴らしさがわかる演奏。批判喧しいメニューインも技術的欠点(グリッサンドに難あり)を越え、ケンペともども曲自体に奉仕しようという姿勢が伝わってきて、全体に優しさ・暖かみに満ち溢れたものとなっています

追記

プログラムを見て気づいたのですが、フルート主席はサミュエル・コールさん。

イージーリスニングのレイモン・ルフェーヴル・グランド・オーケストラの来日時のレギュラー・メンバーだった方でした(澄んだ芯のある音色は今も健在です)。

ボルドー管弦楽団にいるとの話でしたが、こういう形で再会するとは驚きを通り越し、喜ばしい限りです。今後のご活躍に大いに期待したいと思います。

 

執筆者 徹

 

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